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RIDING

About MotoGP Riding

最近のMotoGPライディングについて その1

今年(2016年)も間もなくMotoGPが開幕します。
最近のMotoGPのライディングを見て、皆さんは何を感じ、どう思いますか?

スライドコントロールについて

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 マルクマルケス(右写真)は、肘をするほどバイクを倒してスライドさせながらコーナーを走り抜けます。カッコよくて凄いの一言に尽きますが、以前WGPで2ストローク500㏄のレースを観ていた方、あるいはバイクでオフロード走行をされたことがある方にとっては彼の走りに疑問を感じることはありませんか?

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 少し古い話になりますが、思い出してみて下さい。WGPで2ストローク500㏄マシンを華麗にスライドさせながら、豪快且つ繊細なコントロールをしていたライダーたち、例えばフレディースペンサー(左写真)、ケビンシュワンツ、ミックドゥーハン(右下写真)などを。

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彼らはステアリングステムの鉛直線上に路面に対して垂直に頭を置いたスタイルをとり、リーンインというよりリーンアウトとも見える上体を起こしたライディングフォームで、体の下ではバイクが遊んでいるかのように動いているにもかかわらず、頭は殆ど動かさない走り方をしていました。そして、バイクが滑りすぎてしまった時に、(上写真のマルケスのライディングフォームように)頭と体をバイクの倒れている内側に瞬時に位置させてバイクを起こすことで転倒回避をしていました。これはモトクロスなどオフロードでは通常に使われる転倒回避の技術です。

 つまり、バイクを倒すのと同時に路面に肘を擦るほどバイクの内側に体を落として位置させるマルケスのような乗り方をしていたのでは、突然の滑り出しに対して転倒回避が出来ない危険な走り方をしているのでは?ということです。彼は命知らずの無謀者なのでしょうか。
 しかし彼の走りからは全く怖さが感じられませんし、彼自身も怖いとは一言も言っていません。また、怖さを隠しているようにも見えません。これは一体どういうことなのでしょう?

バランスの取り方について

 あるTV番組で、社交ダンサーとポールダンサーを比較してバランスの取り方には大きく分けて2種類の方法があることを説明していました。
 一つは社交ダンサーのように地面に対して垂直に軸を作り、体は動かしても頭はその軸上で動かさずにバランスを取る方法、もう一つはポールダンサーのように垂直な棒に体を絡ませながら、棒に対して体の位置を動かしてバランスを取る方法です。
 頭の上にピンポン玉を入れたお皿を載せてロデオマシンに乗り、ピンポン玉がお皿からこぼれ落ちないようにする方法を想像してみて下さい。社交ダンサーは体が動いても頭は真っすぐ立てて動かさず、ピンポン玉を落とさないようにします。対してポールダンサーはピンポン玉が落ちそうになる方向に体を素早く位置させて、落とさないように頭を動かします。

 もうお分かりかもしれませんがWGPのライダーたちは社交ダンサーと同じバランスの取り方を、そして今のMotoGPライダーたちはポールダンサーと同じバランスの取り方をしていると考えられるのです。

スライドコントロールとバランスの取り方

 でも、何故バランスの取り方を変える必要があったのでしょう?というかバランスの取り方が変わってしまったのでしょう?それを考えるには、もう一度、バイクを滑らせる=スライドさせる理由を整理する必要があります。

 WGP時代、有り余るパワーにより何処に向かって滑るか分からない転倒に繋がる滑りを、ダートトラック出身のライダーたちは意図的にスライドさせることで滑りをコントロールするようになりました。そのためスライドコントロールというと、意図的に滑らせることで突然のスリップで転倒しないようにするテクニックと考えている人も多いのではないかと思います。
 勿論この理由もありますが、実はスライドさせるのは他にも理由があります。それはWGPの500ccチャンピオンたちの走りを良く見ると分かります。彼らはスライドやドリフトのテクニックを、減速したり旋回することのためにも使っているのです。

 動力を路面に伝える時には出来る限りタイヤをグリップさせてスライドを抑えたいのですが、今のようなトラクションコントロールの技術が無かった時代に、車体が軽く4ストロークの倍の速さでエンジン回転が上昇する2ストロークのマシンでは、スロットルをラフに操作するとホイルスピンを誘発し、いつ何処に向かって滑るか予測もつかない状況でした。そのため転倒回避と減速・旋回の両方に有効なスライドコントロールをするには、社交ダンサーのようなバランスの取り方が必要だったと考えられるのです。
 ところが、今のMotoGPマシンは進歩したトラクションコントロールの技術により、簡単にはスロットル操作でスライドしないバイクになっていると考えられます。そのため、逆に500ccマシンのようにスロットル操作による滑りの誘発とそのコントロールが出来ないのでしょう。
 ラフなスロットル操作による突然の滑りがなくなった代わりに、極端な言い方かもしれませんが、今のMotoGPマシンを少しでも速く走らせようとして、減速や旋回にスライドコントロールを使おうとしたら、あるきっかけを作って滑らないバイクを自分の望む方向に強引に滑らせる必要があるのではないかと考えられます。
 この場合、2ストローク500㏄マシンとの違いは、滑り出しと滑る方向はライダーの意思で決められるということです。つまり、バランスは滑り量だけをコントロールすれば良いということです。
 そこで出来るだけ大きく滑らせようとしたら、肘をするほどバイクを倒し、更に体をバイクの内側に位置させてバランスをとることになるでしょう。そして、これでもバランスが取りきれない場合は、外足をステップから外してでも内側に加重してバランスを取る必要が出てきます。

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 こう考えてみるとマルケスの走りやビニャーレス(左写真)が旋回中にスライドさせながら外足をステップから外すことは理にかなった、至って自然な走り方だということが見えてきます。他のライダーが気付かなかった技術の進歩に対応したライディング方法であり、このライディングの先駆者であるマルケスのMotoGPマシンへの順応性の高さがよく表れていると思います。

Continued to RIDING 2
19,FEB,2017

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